コワーキングとは
~その成り立ちと今後の展開~

新しい働き方・仕事がここにある

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コワーキングスペース カフーツ 代表
コワーキング協同組合 代表理事
伊藤 富雄 smile_case

いよいよ、大企業が有能なフリーランサーとコラボを組んでビジネスを行う時代が始まりました。そして、そのコラボを推進するスキームが、コワーキングです。

コワーキング(Coworking)とは、2005年頃からサンフランシスコを発祥に、フリーランサーやスモールカンパニーが、各自ノートパソコンを持ってある場所(コワーキングスペース)に集まり、それぞれ自分の仕事をしながらも、時に気軽に話し合ったり、勉強会で教え合ったり、あるいは情報やアイデアを交換するうちに協働パートナーとしてコラボを組んだりするという、人とつながることが前提のワークスタイルのことを言います。現時点で世界中に、4000ヶ所以上のコワーキングスペースがあると言われています。

その根底に流れる理念は、たまたま出会った者同士の「寄与・貢献(Contribution)」であり、互いに助けあうことで、小さき事業者の不足しがちな部分を補完する目的があります。利用する席は通常フリーエントリーであり、毎日利用する者もあれば週に数回、月に数日など、各自の仕事をする条件によって自由に選択できます。これはまた、利用するたびに新しい人と出会う可能性が高いということでもあります。

また、ワークスペースとしてだけではなく、各種のセミナーやワークショップが頻繁に開催され、時には仕事を離れて楽しいパーティーを催すなど、いわば働き学ぶ者の「コミュニティ」としてフレキシブルに機能しています。従って、従来のシェアリングオフィスとは、まったく違う要件を満たす労働環境であると言えます。

主に、IT・ウェブ系の受託開発・制作をする個人事業者がそのユーザー層の多くを占めますが、昨今、財務会計、農業、NPO、コンサルティング、ライター、編集者、学生、主婦など、さまざまな業種・業態の利用者がコワーキングスペースに出入りするようにもなってきています。

日本では、2010年5月に神戸ではじめてこの「コワーキングの理念」を実践するコワーキングスペース「カフーツ」が開業し、以降、東北大震災をさかいに、とりわけ首都圏で急激にその数を伸ばし、2014年3月時点で、全国に約300ヶ所のコワーキングスペースを数えるようになりました。

そしてこの動きは地方都市にも波及し、昨年辺りから少しずつですが各地でコワーキングスペースが産声を上げるようになってきています。これは、クラウドをはじめとするテクノロジーの進化を背景に、都市圏に集中しがちであったワーカーが新しい人生観・労働観に沿って働き方や生き方を再考し、自分たちに最も相応しいワークスペースを求めるようになってきた兆しと言えます。

こうした中、平成25年度補正予算案において、中小企業・小規模事業者等をサポートする「創業・ベンチャー支援事業」の予算が計上された際、はじめて国の施策の中に「コワーキング」という文言が盛り込まれました。これは起業家をサポートする立場でもあるコワーキングスペースの存在とその役割について、これまでコワーキングに接する機会のなかったビジネスパーソンや行政をはじめとした社会全般に広く認知を得る契機となりました。

そしてここへ来て、企業は社内のリソースだけでは対応できないビジネスプランに対し、外部の人的リソースとの連携を試みるフェイズに入り、コワーキングというプラットフォームに関心を寄せるようになってきました。この傾向は、アメリカではすでに見られる動きですが、これまでの発注者と受注者の関係にとどまらず、互いに対等の立場でプロジェクトに参加する、いわゆるビジネスパートナーとしてのコワーカーに、大きな期待がかけられるようになってきています。

コワーキングは、もはやフリーランサーとスモールカンパニーだけのものではなく、企業とのコラボを実現する新しい方法論として、その双方にコミットするフェイズに入りました。次いで、スペース内にとどまらず、さまざまな環境、役割、立場、スキームでのフリーランサー、スモールカンパニーの活動が活性化することも近い将来に現実化すると考えています。